医療関係者の妻といつも話す内容は「子供が生まれたら、絶対に医者にならないでほしい」
医者の仕事は普通の人には背負いきれない責任を負う。自分には無理だ。
医者になりたいと思う人ってすごいと思う。あんな給料で人の生き死にを扱うなんて、やってられない。
なので、無条件に医者は尊敬するし、変ないちゃもんは基本的につけない。
彼らは職人だ。職人の邪魔はするなと教わったし。
だもんで、この本を読んでちょっと憂鬱な気分になった。
小松 秀樹
新潮社 (2007/06)
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医療事故の本質に迫ります
著者の限界
日本の医療の危機的状況を誠実に論じた著書
一度でも手術を受けたことのある人なら実感すると思うけど、医療に従事する人は大変だと思う。気胸で手術したときも、手術室には何人もの人間が忙しく動いていて、手術終わった後も夜中まで付きっ切りで看護婦さんが看病してくれた。
もしここで死んでも、恨みはしないと思った。それくらい全力で仕事しているのがわかった。
筆者はこの中で、日本人の死に対する考えが変容していると指摘する。
死なんてすぐそばにあるのに、それから目をそらして暮らしている。死が必然だと夢にも思っていないから、近しい人が死ぬと何かに責任を負わせようとする。
マスコミの報道もある意味「体制への反発」「権力への反発」を発している。自分たちが「体制」「権力」の一部なのに。
「マスコミ」と「大衆」とが病院を攻撃する。マスコミが大衆を煽っているのか。大衆がマスコミの書く記事に飛びついてもっともっとと叫んでいるのか。
生き物というものは個体差があり、その個体差によって病気に弱かったり強かったりする。それらをまとめて診るのが医者だ。見る対象が不確定なので、必然的に医療も不確実になっていく。
この固体によく効く薬も、別の固体には毒にしかならない。そういうこともありうる。その違いが個性だ。副作用が1%の薬を飲んで副作用が出るのは、医師に責任は無い。ただ運が悪かっただけ。
医師にも責任がある場合はある。ただ、必要以上に責任を追及すると医者を目指す人がいなくなる。そのとき困るのは医者を攻撃してきた人たちを含めた、普通の人。
みんな一度、テレビで放送される手術の一部始終を見るといいよ。
BS-iの「医者がすすめる専門医」とか。